愛知県東三河の8市町村(豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市、新城市、東栄町、設楽町、豊根村)では、3月最終週(3月24日~30日)にかけてスタートアップ支援や起業促進に関する様々なイベントや取り組みが展開されました。地域の伝統産業から最先端技術まで、多彩な分野で新たなビジネス創出の動きが見られています。以下、その主なトピックスをまとめます。

スタートアップと地元産業の連携強化

東三河の製造業とスタートアップ企業の橋渡しとなる交流会が開催されました。豊橋・豊川両市の鉄工業者で組織する「豊橋鉄工会」は3月17日、名古屋市のスタートアップ拠点「STATION Ai」で「スタートアップ×豊橋・豊川鉄工会 交流会」を実施。当日は地元鉄工関連企業の経営者らを前に、AIやデジタル技術で製造業の課題解決に挑む5つのスタートアップ企業がピッチを行い、意見交換を通じて新たな協業の可能性を探りました (〖3/17(月)開催〗スカイディスクが豊橋鉄工会主催の「スタートアップ豊橋・豊川鉄工会 交流会」に登壇しました(2025年3月26日)|BIGLOBEニュース)。こうした産業×スタートアップの連携イベントは、地域企業のDX推進とビジネスマッチングを図る取り組みとして注目されています。

また、豊橋市では行政とスタートアップの協働によるサービス導入も進みました。豊橋市は障がい児と家族を支援するスタートアップ株式会社NEWSTAと連携し、新サービス「ファミケア支援検索」を全国で初めて導入しました 。このオンラインサービスは、障がい児を育てる家庭と支援事業所をマッチングするもので、従来は探しにくかった支援先情報をウェブ上で容易に検索・問い合わせできるようにするものです (全国初!障がい児を育てる家族と支援事業所のマッチングを便利に!愛知県豊橋市がスタートアップのサービス「ファミケア支援検索」を導入 | 豊橋市のプレスリリース)。行政がスタートアップの技術を取り入れることで、福祉分野での課題解決と地域発のサービス育成を両立させる試みとして評価されています。

起業コミュニティの活性化と人材育成

地域内の起業家コミュニティづくりも活発です。豊橋市内では3月28日、宇宙ビジネスに関心のある企業や個人をつなぐオンライン交流会「豊橋宇宙ビジネス交流会2024→2025」が開催されました 。このイベントは宇宙関連ビジネスの年度末勉強会を兼ねており、豊橋市が進める宇宙ビジネス支援プロジェクトの現状紹介や、人工衛星データ活用のミニ講座、そして宇宙ビジネスに挑戦する企業によるライトニングピッチなどが行われました (〖イベント〗2025年3月28日(金)「豊橋宇宙ビジネス交流会2024→2025」を開催します! | 東三河で起業をサポートするコワーキングスペース Startup Garage)。新興分野のスタートアップ同士や支援者が情報交換し合うことで、次年度以降のプロジェクト創出につなげる狙いです。

一方、将来の地域人材育成に向けた新たな連携も生まれました。3月27日には愛知県東三河総合庁舎にて、一般社団法人CoIU設立基金(※「共創」を学べる新しい大学設立を目指す団体)と愛知県東三河県庁との協定締結式が行われています。この協定は、東三河地域の人材育成や課題解決に向けて両者が持つ人的資源・知的資産を活用し、緊密に連携・協力していくことを目的とするものです (地域人材の育成を目指す一般社団法人CoIU設立基金 愛知県東三河県庁との連携・協力に関する協定を締結 両機関の人的資源・知的資産の活用を目指す | 一般社団法人CoIU設立基金のプレスリリース)。地域ぐるみで次世代の起業家やイノベーターを育てる土壌づくりが進められていると言えるでしょう。

事業承継を支援する取り組み

中小企業が多い東三河では、事業承継支援にも力が注がれています。豊川市では3月24日夜、豊川商工会議所にて事業承継セミナー「社長!事業承継はどうしますか?」が開かれました 。講師には自身も事業承継を経験した継活大学学長の西川正悟氏を招き、後継者不在の中小企業が円滑に事業を引き継ぐためのポイントや実体験に基づく教訓が語られました (セミナー・イベント情報 – 愛知県事業承継・引継ぎ支援センター)。経営者の高齢化が進み約4割が後継者不在とも言われる中 (セミナー・イベント情報|事業承継 個別相談会(新城市役所)|愛知県事業承継・引継ぎ支援センター|安心できる事業継承で未来へつなぐサポートを)、参加者は熱心に耳を傾け、事業承継に向けた準備の重要性を再確認する機会となったようです。

新城市でも、毎月第4水曜日に事業承継個別相談会が定期開催されています (セミナー・イベント情報|事業承継 個別相談会(新城市役所)|愛知県事業承継・引継ぎ支援センター|安心できる事業継承で未来へつなぐサポートを)。3月26日には新城市勤労青少年ホームで相談会が行われ、専門相談員が事前予約した地元事業者の個別相談に対応しました。事業承継の進め方が分からない、後継者探しに不安があるといった経営者の悩みに応える場となっており、「廃業させない」ための地道なサポートが地域ぐるみで続けられています。

地域資源を生かしたイベント盛況

東三河ならではの産品や文化をアピールするイベントも週末に相次ぎ開催されました。農畜産が盛んな当地域の“肉”に焦点を当てた「NIKU LOVER!ニクラバ2025」(東三河肉の祭典)が3月29日・30日の両日、豊橋市の道の駅とよはしで開催されています。牛や豚など地元ブランド肉を扱う19店舗が日替わりで出店し、ステーキや牛タン串、ソーセージなど各店こだわりの肉料理が一堂に会しました(29日と30日肉の祭典「ニクラバ!」 | 東日新聞)。昨年好評だったこのイベントには家族連れなど多くの来場者が詰めかけ、東三河の食と農の魅力を存分に味わいながら地域産業を応援する姿が見られました。

また蒲郡市では、同じ週末に「ガマロケ映画祭」が開催され、地域を舞台に撮影された自主制作映画の上映会が行われました。会場となった蒲郡信用金庫ホールでは、蒲郡市や隣接する幸田町で制作・撮影された長編・短編あわせて7本の映画を上映 (ガマロケ映画祭29、30日 | 東日新聞)。地元ならではのロケ風景やストーリーに観客は親しみを感じ、作品を通じて東三河の魅力を再発見する機会となりました。

この他にも、田原市では今月中旬に地元企業約50社が参加する企業合同説明会(たはら企業フェア)が開催されるなど (たはら企業フェア盛況 | 東日新聞)、東三河各地で多彩な取り組みが展開されています。スタートアップ支援から伝統産業の活性化まで、地域全体が一体となって新たなビジネスチャンス創出と持続可能な経済の発展に取り組んでいる様子がうかがえます。今後も東三河発の起業家や事業者たちの活躍に注目です。

カテゴリー: 地域のニュース