東三河地域(豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市、新城市、東栄町、設楽町、豊根村)では、初春のこの時期にスタートアップ支援やビジネス関連の新施策が相次いで発表・開催されました。地域各地で起業支援プログラムの募集開始や、デジタル技術を活用した事業展開、地域資源を活かした新サービスの提供など、未来志向の取り組みが活発化しています。以下、3月30日から4月13日までの2週間に確認された主な動きをまとめます。
豊橋市:起業支援イベントと新事業の展開
豊橋市では、起業志望者向けの支援プログラム「PMFT(プロダクト・マーケット・フィット・豊橋)」が今年度も参加事業者募集を開始しましたtasuki-inc.com。PMFTは、製品やサービスが地域市場にマッチしているかを検証し、事業の軌道修正を支援するプログラムです。昨年度利用者の事例紹介とともに募集が告知され、豊橋で起業を目指すスタートアップの市場調査と成長支援に力を入れています。また、同市の創業支援拠点Startup Garageでは、子育て中の母親を対象にしたキャリア相談イベント「ママさん進路相談室」の年間スケジュールが発表されました。起業に興味はあるものの「どんな仕事が向いているかわからない」「ぼんやりとやりたいことはあるが決めきれない」といった悩みを持つ参加者に向けた全2回の講座で、6月と11月に開催予定ですstartupgarage.jp。子育て経験のある講師による起業体験談やビジネスマインドの紹介を通じ、ママたちの一歩踏み出しを後押しする狙いです。
一方、豊橋市内の老舗商店街でも新たなデジタル施策が始動しました。豊橋駅南側の大豊商店街は、市の補助金を活用した昨年度の実証実験を経て、商店街情報発信プラットフォーム「QRan(クラン)」を本格導入することを決定しましたprtimes.jp。店舗情報やイベント案内をスマートフォン向けWebアプリで一括発信し、商店街全体の集客力向上を図る取り組みです。60年の歴史を持つ同商店街がデジタル地図サービス企業と共同開発したアプリで情報を発信することで、新旧の店舗が混在するエリアの魅力を効率よく届ける狙いです。
さらに豊橋市発の企業が新分野への挑戦を始めています。自動車関連事業を手がけるユタカサービスグループ(豊橋市)は、宇宙産業への足掛かりを築くべく北海道への視察を精力的に実施し、この動きを「宇宙関連事業への大きな第一歩」と位置付けましたhigashiaichi.jp。大塩啓太郎社長らは3月10日~12日に北海道帯広市や大樹町の宇宙関連施設・企業(インターステラテクノロジズ社や宇宙港「北海道スペースポート」など)を訪問し、現地自治体とも意見交換。ロケット開発から人工衛星、宇宙ビジネスに関わる幅広い分野で新規参入の可能性を感じたといい、「企業として半歩先へ進む」ため産官学連携の重要性も実感したとコメントしています。地域の中堅企業が宇宙産業という新領域に挑む姿勢は、東三河発のビジネスの多様化と成長志向を象徴する動きと言えます。
なお、豊橋市中心市街地では地域活性化イベントの開催も発表されました。昨年に続き、第5回となる「芋フェス!」(サツマイモをテーマにしたフードフェス)が4月下旬に豊橋駅前の広場で開かれることが決定し、4月7日に開催情報が公開されていますprtimes.jp。静岡県発祥で延べ20万人以上を動員した人気イベントが再び豊橋に戻ってくる形で、今回は会場を拡大して実施予定。地元スイーツ店など多数の出店者が集い、春の週末に地域を盛り上げる見込みです。
豊川市:企業のDX推進
豊川市でも地域企業による先進的な取り組みが報じられました。物流商社のトヨコン(豊川市)は、生成AI「ChatGPT」の有料版を社内全体で導入し、業務効率化とDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速を目指していますhigashiaichi.jp。4月11日には全社員182人を対象にオンライン研修を開催し、AIの基礎知識や活用方法を共有しました。社内には約20のChatGPTアカウントを用意し、各事業所で社員が共同利用できる体制を整備。月額約10万円の費用を投じたこの施策は、中小企業としては先進的な試みであり、「規則の問合せ対応にAIを活用する」「会議録の要約」「業務改善策の提案をAIに考えさせる」といった具体例を通じて社内の創造性向上を図るとしています。明石耕作社長は「AIを使いこなすには人間力も高める必要がある。社員の課題発見力を養い、AI活用で企業として半歩先に行きたい」と意気込みを語っており、地域企業のDX推進の一例として注目されています。
田原市:地域資源を活かした新サービス
渥美半島を擁する田原市では、観光と地域経済の活性化につながる新サービスが始まりました。渥美町福江に今年2月末リニューアルオープンした複合商業施設「あつみの市レイ」において、4月10日より宿泊施設「ゲストハウスあつみ編集舎」が一般向けにプレオープンしましたhigashiaichi.jp。地元の事業者グループが運営するこのゲストハウスは、施設2階の旧事務所スペースを改装した素泊まりタイプの簡易宿泊所で、入口付近に共有キッチン兼リビングを設置し、宿泊者同士が自然と交流できる作りになっています。豊かな自然や農産物に恵まれた渥美地域で交流人口を増やす拠点として期待されており、4月末までは全タイプ1泊税込3000円というお試しキャンペーン価格で利用者を募集中です。地元産品の直売所やカフェも併設された施設で、滞在型観光を促進し地域の賑わい創出を目指す取り組みとして注目されています。
その他の地域トピックと今後の展望
新城市からは、将来の地元就職を促すユニークな取り組みが報告されました。新城市役所は若者議会からの提案を受け、市内企業の魅力を学生に伝える情報誌「Miraie(ミライエ)」の2025年版を作成し公開しましたcity.shinshiro.lg.jp。本誌では地元企業20社以上の事業内容や採用情報を掲載し、今年版からは企業見学の受け入れ可否やインターンシップ情報も新たに盛り込まれています。学生だけでなく保護者や教育者にも閲覧を促し、地元企業で働くことを具体的にイメージしてもらう狙いです。人口減少が進む中山間地域において、将来世代のUターン就職や地元定着を図る取り組みとして期待されています。
広域的な話題では、東三河エリアをホームとするプロバスケットボールBリーグの「三遠ネオフェニックス」と企業の協働による地域貢献策が実施されました。サーラグループとネオフェニックスは、4月6日の試合で選手が着用した限定コラボユニフォームをオンラインオークションに出品するチャリティ企画を展開higashiaichi.jp。4月13日夜まで入札を受け付け、売上金は豊橋善意銀行を通じて東三河の児童福祉に役立てられる予定です。地域企業とスポーツチームがタッグを組み、ユニフォーム16着(選手15名分+マスコット分、直筆サイン入り)を出品するこの試みは多くのファンの注目を集め、地域の社会貢献活動として定着しつつあります。
以上のように、東三河の各地で多彩なスタートアップ支援策やビジネスイベント、新サービスが展開されています。今後も地域全体で官民連携した起業支援やDX推進、地元資源を活かした事業創出が加速しそうです。既に4月下旬以降も各市町村でビジネスセミナーやマルシェ、産業振興イベントの開催が予定されており、東三河発の新たなチャレンジから目が離せません。地域経済を牽引するこれらの最近の動きが、東三河の未来に向けた芽吹きとなることが期待されています。